INTERVIEW1

バーチャルプロダクションで
新たな表現にチャレンジを続ける
先輩&若手対談

大賀 英資(オオガ エイスケ)×助田 喜久(スケダ ヨシヒサ)

クリエイティブ部門
ビジュアルソリューションビジネス部 バーチャルプロダクション課

プロフィール

大賀英資 VPディレクター

高校時代に単身渡米。数多くの著名な映画人を輩出する南カリフォルニア大学で映画の演出について学び、2019年に卒業、その後はフリーランスの監督として活動する。米国ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントでのアルバイトを経て、2020年10月に新卒でソニーPCLに入社。ハリウッドの現場で培ったノウハウを基に、VPスタジオでは先進技術とクリエイティブの間に立ち、国内外の映画やCM案件において演出・プロデュースに携わる。

助田喜久 VPコーディネーター

大学では映像制作における撮影・録音分野を専攻。技術を活かし広く映像制作に携わることを目的に、2022年、新卒でソニーPCLに入社。映画制作をはじめ様々な案件に携わる傍ら、先進の映像表現を目指すための技術検証などにも関わる。VPスタジオに導入したSMODEというXRシステムのメイン担当に抜擢され、若手ながらソニーPCL内のSMODE第一人者として活動中。

先進映像技術を駆使する
バーチャルプロダクション課の仕事

大:世界でバーチャルプロダクション(以下、VP)が注目され始めた2019年頃、日本でもソニーPCLが本格的にVPに着手することが決まり、私もアメリカでVPに関わっていた経緯から入社を決めました。もともと私には、国を越えての撮影など、場所や諸条件にとらわれない自由な映像制作に挑みたいという夢があり、VPはそれに適したツールで、実現への突破口になると感じていたのです。
VP部署の立ち上げから今までの間に80件以上、長編・短編映画、CM、MV(ミュージックビデオ)など幅広い映像作品を手掛けてきました。ソニーPCLと他社との違いは、ジャンルにとらわれないこと。制作会社の多くは、例えば映画やCM、PV(プロモーションビデオ)といった専門分野を決めているのですが、当社にはそれがない。そのため約2年間の幅広い経験を通して、多くの知見を培うことができました。

新たな映像制作環境である
VPの魅力とは?

大:VPはひとつの技術ではなく、ゲームエンジンのようなリアルタイムCG技術や、例えば助田さんが担当するSMODEのXRシステムなど、様々な技術を組み合わせて成り立つものなので、案件によってカスタマイズする必要がある。どういう映像が求められ、それにはどの技術が必要かとベストを探る、そこがおもしろいところですね。

助:映画とMVでは1カットにかける時間も撮り方も全然違いますからね。
さらに手法も様々で常に複雑化しています。撮影対象とアプローチの仕方、そのマッチングをする過程に決まったワークフローがないところに魅力を感じます。

大:そこには無限の可能性が広がっています。私たちは、映像において新しいことを考え新しい方法で撮影するという、未知な領域にもトライができる立場。やりがいに満ちた環境があります。

2年目にしてSMODEメイン担当へ
バーチャルプロダクション課での役割

助:先端技術に興味があった私はバーチャルプロダクション課に配属されたものの、ここは本来クリエイティブな業務がメインの部署。技術的な部分にも関わりたいと当時の上司に相談したところ「やりたいようにやってみるといいよ」と言っていただけ、モデリングツールを使って美術セットのシミュレーションCGを作りました。それを機に本格的にCGソフトを触り始め、SMODE というXRシステムの導入が決まった際にメイン担当へ。
2023年は、VPスタジオ内で撮影したカーチェイスコンテンツ『drive』のXRオペレーションを担当しました。部署本来の仕事に専念させるのが一般的かもしれませんが、ここでは“やりたい”を後押しくれた。だから今の私があります。

大:補足すると、クリエイティブを行う部署とはいえ、人にはそれぞれ得意分野があります。同じ部署内で違う強みを持つ者同士がチームを組むことで、よりうまく機能する。助田さんはクリエイティブを理解した上で技術を担えるのが強み。現在は技術専門の部署とクリエイティブとの間に立ち、橋渡し的な役を担ってくれていますが、各々の強みを活かすことが重要なんです。

数々の武器を持つ
ソニーPCLならではの強み

大:VPを手掛ける会社は他にもありますが、ソニーPCL髄一の特長は、今まで築き上げてきたポストプロダクションとしてのノウハウがあること。現場に撮影班や編集分野の技術者を呼んで、各専門の技術と知見を掛け合わせながら新たな手法を編み出すこともあります。さらにソニーグループの一員であることも大きい。LEDもカメラもソニー製品なので、機器の技術開発者と直接やり取りをしながら、その情報を現場で活かすことも可能です。

助:私も、例えばLEDをより使いやすくするための方法をソニーの技術者の方に教えてもらい、実際に手を動かして実装することも日常的に行っています。

大:ソニーグループ会社のソニーPCLなら、ソニーの技術をシェアし共に考案していける。強い武器を持って制作に挑めるというのは、クリエイターにはたまりません。

現場でも、リモートでも
リアルに世界とつながるVPの仕事

大 :2022年には、アメリカのソニー・ピクチャーズ エンタテインメントと合同で、先進技術を組み合わせた映像制作のプロジェクトを実施しました。コロナ禍の真っただ中でクルーの行き来ができない中、海外で撮影しているかのようなシーンをこのVPスタジオで撮影しようという試みです。結果としてリモートでの海外シーン撮影を実現した上に、ハリウッドと同水準の制作を達成するという、ひとつの成功を収めることができました。これを機に、海外のスタジオとの協力関係が深まり情報交換を行うのはもちろん、海外案件の仕事も増えつつあります。
スタジオ内で様々なロケ撮影が行えることはコロナ禍においては分かりやすいメリットで、当初は「コロナが収束したらロケに戻るのか」という心配はありました。でもそれは杞憂でしたね。VPはロケの代わりではなくひとつの手法だということが、我々の2年間の蓄積のなかで実証されています。「この演出にはロケ撮影?VP撮影?」というように選択肢が広がったのです。

助:特に私のような技術系の者にとって、リアルタイムに海外技術者とコミュニケーションをとれるのは非常に有利なんです。技術は即座に活かしてこそなので、最新情報を取り入れながら実践的に積み上げていくのが一番ですから。
またコロナが収束してきたことで、VPスタジオには海外からの見学者が増えてきました。業界のとんでもない大物がふらりとやって来ることも。このポジションにいながら、世界の第一線で活躍するクリエイターたちとやり取りができるメリットは大きい。確実に世界と繋がっている場所にいると実感しています。

ソニーPCL、そして映像技術の世界が
これから求める人材とは

助:映像業界の先輩である大賀さんに学んだことは、チャレンジ精神。上層部とぶつかっている姿を目にすることもありますが(笑)、逆にその姿から、恐れる必要はないこと、そして何度でも挑戦を受け入れるソニーPCLの器の大きさを知りました。だから私も、やりたいことには何でも挑戦すると決めています。

大:日々進化する映像技術の世界において、失敗を恐れず突き進める人材はかなり重要です。TYO driveとの共同プロジェクトで制作した『drive』で、これまでの技術的に難しい部分をどうするかと議論していたときに、助田さんが「それ、SMODEでできますよ」って発言した時は、こいつスゴイなと思った。普通、やれるかなと思っても臆して言えない(笑) 。そこから「じゃあ、もっとこうしては?」とみんなのアイデアが湧き、クリエイティブの可能性は無限に広がるので、彼のような存在こそ貴重なんですよね。

助:とはいえ、発言後に「しまった!」と思うことも多いんです (笑) 。実際に『drive』の時も、その後様々な問題が発生して大変でした。ですが検証を重ねてやり通したおかげで、SMODEに対する知見が押し上げられたという充足感があります。またソニーPCLは「おい大丈夫か」ではなく「よしじゃあ検証しよう!」とみんなが乗っかってくれる社風で、見放されることは絶対にない。『drive』も、多くの方に助けられて完成させることができました。

大:映像の業界には発想力を持った人間は大勢いますが、そのなかで発想を形にできる人は限られます。新しいことへの挑戦こそが私たちの仕事。ビジョンを掲げ、自らの道筋を作り、助田さんのように周りを上手に巻き込み巻き込まれながら最後まで完走することができる、そんな“ゴール力”を持った人間が、これからの映像技術を牽引していくことでしょう。